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インターフェースの終焉:なぜAIエージェントがエンタープライズソフトウェアを再定義しているのか

人工知能(AI)が人間の仕事を奪うことへの不安が蔓延する中で、テック業界の頂点から、よりきめ細やかで、おそらくより破壊的な予測が浮上しています。1,340億ドルの価値を持つデータおよびAIの巨人であるDatabricksのCEO、アリ・ゴドシ(Ali Ghodsi)氏は、ソフトウェア業界に対して厳しい予測を発表しました。従来のSaaS(Software-as-a-Service)モデルは死に絶えるわけではありませんが、急速に無意味なものになりつつあるというのです。

月曜日、Databricksが驚異的な54億ドルの収益ランレートを発表した際、ゴドシ氏は TechCrunch の取材に応じ、AIが即座にSaaSアプリケーションを駆逐するという一般的な説に異を唱えました。代わりに彼は、複雑なワークフローを実行可能な自律型システムである AIエージェント(AI agents) の台頭により、現在の「ポイント・アンド・クリック」のパラダイムが時代遅れになると主張しました。何十年もの間、エンタープライズソフトウェアの価値は、硬直したユーザーインターフェースと専門的な資格の中に閉じ込められてきました。ゴドシ氏によれば、その時代は終わりを迎え、自然言語のコマンドが実行を主導し、基礎となるアプリケーションは見えない配管(インフラ)となる未来に取って代わられようとしています。

エージェンティック・シフト:ポイント・アンド・クリックからプロンプト・アンド・エグゼキュートへ

ゴドシ氏の主張の核心は、SaaSビジネスモデルの根幹であるユーザーインターフェース(UI)を突いています。過去20年間、Salesforce、SAP、Workdayといったプラットフォームの優位性は、ある特定の種類の堀(Moat)の上に築かれてきました。企業は従業員を訓練し、複雑なダッシュボード、入り組んだメニュー、多段階のウィザードを操作させるために数百万ドルを費やしてきました。「世界中の何百万人もの人々が、それらのユーザーインターフェースのトレーニングを受けました」とゴドシ氏は指摘しました。「そして、それがそれらのビジネスが持つ最大の堀だったのです」。

しかし、大規模言語モデル(LLMs)と エージェンティック・ワークフロー(agentic workflows) の登場が、この参入障壁を解体しつつあります。近い将来、ユーザーは四半期ごとの売上レポートを作成するためにどのボタンをクリックすればよいか、あるいは購入注文を承認するために5つのサブメニューをどう進めばよいかを知る必要はなくなります。単にAIエージェントに実行を依頼するだけになります。

インターフェースが独自のダッシュボードから普遍的な自然言語に移行すると、アプリケーションの「粘着性」は消失します。エージェントは実質的にユーザーをソフトウェアから切り離し、SaaSアプリケーションを単なるデータベースや、舞台裏で操作されるAPIのセットとして扱います。この「ポイント・アンド・クリック」から「プロンプト・アンド・エグゼキュート」への移行は、アプリケーション層をコモディティ化し、価値をデータとエージェントを動かすインテリジェンスへとシフトさせます。

データ・インテリジェンス:新たな企業のバックボーン

ゴドシ氏が示唆するように、アプリケーション層が「退化した器官(vestigial)」のようになれば、エンタープライズテクノロジーにおけるパワーダイナミクスは劇的にデータ層へと移ります。このテーゼは、Databricks が単なるデータウェアハウス・プロバイダーとしてではなく、「データ・インテリジェンス・プラットフォーム(data intelligence platform)」として積極的なポジショニングを行っている理由を説明しています。

論理は明快です。AIエージェントが「EMEA(欧州・中東・アフリカ)地域における過去3年間の顧客離脱を分析せよ」といったタスクを正常に実行するためには、クリーンで適切にガバナンスされ、アクセス可能なデータが必要です。特定のブランドのCRMインターフェースは厳密には必要ありません。

Databricksは、自社のツールですでにこの変化を目の当たりにしています。ゴドシ氏は「Genie」を強調しました。これは同社のAI搭載インターフェースであり、非技術系のユーザーでも平易な英語を使って膨大なデータセットを照会することを可能にします。以前は、このようなタスクにはSQLやPythonの知識が必要であり、データへのアクセスはデータサイエンティストやエンジニアに限定されていました。技術的な障壁を取り除くことで、GenieはDatabricksのコア製品であるデータウェアハウスの利用急増を牽引しました。

これは広範なトレンドを裏付けています。AIエージェントが複雑な機能へのアクセスを民主化するにつれ、ワークフローのインターフェースではなく、データインフラを制御する組織が最大の価値を手に入れることになるでしょう。

「無意味化」のタイムライン vs. 「終焉」の説

重要なのは、ゴドシ氏が「終焉(death)」と「無意味化(irrelevance)」を区別している点です。悲観的なベンチャーキャピタリストの間で人気のある「SaaSは死んだ」という説は、企業が一夜にして記録システムを剥ぎ取るような突然の絶滅イベントを示唆しています。ゴドシ氏はこれを非現実的であるとして退けています。

企業の動きは緩やかです。規制要件、巨大なデータの重力、そして組織の慣性により、レガシーな記録システムは何年も、おそらくは何十年も存続します。「なぜ記録システムを移行するのでしょうか? 移行するのは大変なことですから」とゴドシ氏は認めました。

代わりに、その衰退はオンプレミス・ソフトウェアからクラウドへの移行を反映したものになるでしょう。Amazon Web Servicesが開始された日にオンプレミスのサーバーが消え去ったわけではありません。しかし、それらはイノベーションと成長の中心地ではなくなりました。ビジネスの将来戦略にとって「無意味」なものになったのです。同様に、従来のSaaSアプリもおそらくバックグラウンドで動き続け、台帳やデータベースを維持するでしょうが、人間の労働力がそれらに直接ログインすることはなくなるでしょう。企業の「玄関口」はAIエージェントとなり、SaaSアプリケーションはユーティリティ・プロバイダーの地位に追いやられます。

財務的な検証:Databricksの市場急騰

ゴドシ氏の予測が重みを持つのは、彼の役職だけでなく、会社の財務実績があるからです。Databricksが発表した前年比65%の成長率と、54億ドルに達する年間収益は、市場がすでに財布(投資)によって意思を表明していることを示しています。

重要なことに、その収益のうち14億ドル以上が現在、具体的にAI製品によるものです。このAI関連収益の急速な成長は、企業が実験段階を超え、エージェンティックな未来に必要なインフラを積極的に構築していることを示唆しています。

同社はまた、1,340億ドルの評価額で50億ドルの巨額の資金調達ラウンドを完了したことを認めました。この豊富な資金は、20億ドルの融資枠と相まって、市場の変動を乗り切りつつ、レガシーな既存企業(legacy incumbents) を破壊する恐れのあるまさにそのテクノロジーに多額の投資を行うことを可能にします。

比較分析:従来のSaaS vs. AIエージェントモデル

以下の表は、ゴドシ氏が予測する根本的な構造変化を概説し、確立されたSaaSパラダイムと新興のAIネイティブモデルを対比させたものです。

特徴 従来のSaaSモデル AI駆動のエージェンティックモデル
ユーザーインターフェース 硬直したダッシュボード、メニュー、フォーム 自然言語および意図に基づいたプロンプト
主要な堀(Moat) 複雑なワークフローに対するユーザーの習熟 データの質および独自のインテリジェンス
ワークフローの実行 手動で、段階的な人間による入力 自律的で、目標指向のエージェントによる実行
データのアクセシビリティ 特定のアプリケーション内にサイロ化 データ層を介して統合され、アクセス可能
バリュードライバー 機能の深さとワークフローの制御 成果のスピードと自動化の精度
ユーザーの障壁 資格取得のための険しい学習曲線 学習曲線ゼロ(対話型)

結論:ソフトウェアの見えない未来

AIが従来のSaaSモデルを無意味なものにするという予測は、テクノロジーセクター全体への警鐘として機能します。何十年もの間、ソフトウェアベンダーはより良いネズミ捕り(より良いボタン、より良いレイアウト、より良いダッシュボード)を作ることに集中してきました。アリ・ゴドシ(Ali Ghodsi) 氏の洞察は、未来はネズミ捕りを作るのをやめ、自分の代わりにネズミを捕まえてくれる「ジーニー(魔法使い)」を作る人々の手に委ねられていることを示唆しています。

既存企業にとって、その課題は死活問題です。インターフェースを重視した自社のビジネスモデルを捨て去り、目に見えないエージェンティック・ワークフローを受け入れることができるでしょうか? あるいは、かつてのオンプレミスの巨人のように、世界を支えながらも主導権を失い、ゆっくりと背景へと消えていくのでしょうか? Databricksが上昇を続ける中、答えはますます明確になっているようです。インターフェースは死んだ。データよ永遠なれ。

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