
人工知能の軍拡競争は戦場を移している。2024年と2025年は半導体、特にNvidiaのGPUを巡る争奪戦に明け暮れたが、2026年はギガワットの年になりつつある。テック業界のエネルギー地図を根本的に変える動きとして、Metaは最大6.6ギガワット(GW)の原子力を確保するための確定的合意に署名した。この大規模なコミットメントは、Vistra、TerraPower、Okloとのパートナーシップを含み、重要な現実を強調している:汎用人工知能(Artificial General Intelligence、AGI)への道はコードだけで作られるのではなく、信頼できるベースロード電力によって支えられている。
業界の観察者にとって、この発表は単なる調達契約以上の意味を持つ。AIインフラの物理的制約が成長の主要なボトルネックになっているという合図だ。Meta、Microsoft、Googleのようなハイパースケーラーが次世代モデルを訓練するために事業を拡大するにつれて、風力や太陽光といった従来の再生可能エネルギーの間欠性は、大規模データセンターの24時間365日の電力需要には不十分であることが明らかになっている。
Metaの戦略は分散化が特徴的だ。単一の供給者や技術に賭けるのではなく、既存炉からの即時供給と次世代の小型モジュール炉(Small Modular Reactors、SMRs)の長期的な賭けをバランスさせたポートフォリオを構築している。合意は実質的に三つのカテゴリーに分かれる:既存ベースロードのアップデート、先進的なナトリウム冷却炉、そしてマイクロリアクターのキャンパスだ。
この契約構造は、将来のAIクラスター、特にオハイオ州の「Prometheus」スーパー・クラスターの展開に合わせて電力供給を増強するタイムラインを示している。
Table 1: Meta’s Nuclear Energy Partnerships and Capacity
| Partner | Technology Type | Capacity Commitment | Expected Timeline |
|---|---|---|---|
| Vistra Corp | 既存の原子力発電容量 | ~2.1 GW | 即時/進行中 |
| TerraPower | Natrium(ナトリウム冷却型) | ~2.8 GW(合計潜在) | 2032年(初期ユニット) |
| Oklo | Aurora Powerhouse(マイクロリアクター) | ~1.2 GW | 2030年(第1フェーズ) |
| Various | 出力増強(uprates)と送電網改善 | ~500 MW | 2027–2029年 |
Vistra:即時の解決策
即時の電力供給の要はVistra Corpから来る。MetaはペンシルベニアのBeaver Valley発電所とオハイオのPerryおよびDavis-Besse発電所に紐づく20年の電力購入契約(Power Purchase Agreement、PPA)を確保した。重要なのは、この取引が既存の電力を単に取り込むだけではない点だ。既存炉の総出力を増やすための技術的修正、つまり「出力増強(uprates)」への資金提供が含まれている。これにより、Metaは新しい発電所をゼロから建設する際に伴う十年単位の規制ハードルを回避しつつ、新たな容量をオンラインにできる。
TerraPowerとOklo:未来への賭け
契約の長期的要素は、先進的な原子力技術に依存している。Bill Gatesが支援するTerraPowerとのパートナーシップはNatrium炉の配備に焦点を当てている。これらのナトリウム冷却高速炉は、従来の軽水炉より安全で効率的になるよう設計されている。Metaは初期の二基(690 MW)への開発資金を約束し、2035年までにさらに六基の権利を有する。同様に、Okloとの契約はオハイオ州Pike郡にAurora Powerhouse設計を用いた原子力キャンパスを建設するもので、2030年の運転開始を目標としている。
AIブームを巡る物語は急速に変容している。ここ2年、市場の注目はNvidiaとH100やBlackwellチップの供給に独占されていた。しかし、これらチップの配備は明確な物理的現実を露呈させた:AIデータセンターは膨大な電力を消費する。
標準的なデータセンターは30–50メガワット(MW)を消費することがある。対照的に、AIの訓練用クラスターは現在ギガワット規模に近づいており、中規模都市の消費電力に相当する。「Prometheus」スーパー・クラスター(オハイオ州ニューオールバニーにあるとされる)は、少なくとも1 GWの電力を必要とすると見込まれている。
このエネルギー密度は従来の再エネ戦略を複雑にする。太陽光や風力は新規エネルギーとしては最も安価だが、間欠的である。AI訓練は日没や無風時に停止できない。バッテリーは短時間のギャップを埋められるが、ギガワット規模の「安定化(firming)」を行うにはコストが途方もなく高くなる。この経済的物理学が原子力への転換を促している。原子力は稼働率(capacity factor)が90%を超える炭素フリーの電力を提供できるからだ。
Metaの発表は原子力を強調しているが、その波及効果はコモディティ市場全体に広がる。「真の」AIブームは、アナリストが示唆するように、電力を送るために必要な物理的インフラへと下流に移っている。
主要なインフラ制約:
これら物理的制約の複雑さが、Metaの取引が地理的に集中している理由を説明している。オハイオ州とペンシルベニア州(PJM Interconnectionの送電網)に焦点を当てることで、Metaは既存の発電資産の近くに計算リソースを配置し、送電のボトルネックを最小化している。
Metaの6.6 GWの取得は競合他社に大きな圧力をかける。送電網容量がゼロサムゲームである以上、Metaが確保した電力はGoogle、Microsoft、あるいはAmazonが利用できない電力だ。
エネルギー分野におけるファーストムーバー利点
歴史的にテック分野での「ファーストムーバー利点」は製品の市場投入を意味していた。AI時代では、電力供給契約を確保することを指す。現在、米国の送電網は「接続待ちキュー(interconnection queues)」で混雑している—系統に接続する許可を待つプロジェクトのリストだ。Vistraとの既存容量の契約や、Oklo/TerraPowerとの専用の裏面発電・共置発電の契約を結ぶことで、Metaはこのキューの一部を実質的に迂回している。
持続可能性と現実
この動きはまた、企業の持続可能性目標の成熟を示している。業界はデータセンターの電力使用を再生可能エネルギー証書(Renewable Energy Credits、RECs)で「相殺」するアプローチから、24時間365日カーボンフリーエネルギー(24/7 Carbon-Free Energy、CFE)へと移行しつつある。RECsはしばしば夜間にデータセンターが石炭やガスで稼働しているという事実を帳消しにしてしまう。現時点でギガワット規模の負荷に対して24/7 CFEの要件を満たし得るスケーラブルな技術は原子力のみだ。
この規模のエネルギー調達は、Metaが訓練しようとしているAIモデルの規模を垣間見せる。6.6 GWのポートフォリオは、概ね500万世帯の米国家庭に電力を供給できるに相当する。この規模のリソースを計算タスクに割り当てるということは、Metaが将来のAIモデルを単なるソフトウェアの更新と見なすのではなく、産業規模のインフラプロジェクトとして捉えていることを示唆している。
今後十年の後半を見据えると、主要なAI研究所を差別化する要因は単に人材やチップ供給だけでなく、電力を常時供給し続けられる能力になるかもしれない。今回の歴史的な原子力合意により、MetaはAGIの追求が電力不足で抑制されないことを確実にし、AIインフラ企業として何を意味するかの新たな基準を設定した。